妊婦さんは胎児への影響を考え、薬を飲まない方が良いのでしょうか?
この質問に薬剤師としてお答えするためには2つのことを考えなければなりません。
それは服薬したことによる胎児への影響と、薬を飲まないことによる母体と胎児への影響です。
薬物が胎盤を通過することによる胎児への影響は“服用した時期”と薬剤固有の“薬剤危険度”が関係しています。
妊娠期間を3つに分けた場合、最終月経開始日から27日目の初期は薬剤の影響は残らない時期です。
28日目から15週6日目までの中期は性器官形成が進む時期で催奇形性が問題になり、16週から分娩
までの期間は臓器障害や羊水減少などの胎児毒性が問題になります。特に危険な時期は妊娠4週~12週です。
次に薬剤危険度とは、薬物個々の催奇形危険度を疫学調査、症例報告、相談事例、生殖試験、基礎試験に
基づき総合的に評価したものです。これら服用時期と薬物危険度の掛け算で危険レベルが変わります。
参考文献:「妊娠と薬」
2つ目に、薬を飲まないことによる母体と胎児への影響について考えます。
妊娠中はホルモンバランスが大きく変化するため、感染症での重篤化リスクが高くなることが報告されています。
ママの体調不良が続けば胎児への酸素や栄養の供給が滞ったり、心身のストレスが胎児の発育に影響を及ぼすこと
があります。ママが服薬を我慢すれば胎児は安全というのは間違いです。
私は、時期を見極めたうえでリスクの低い薬を服用し、早期に回復させることが母子にとってベストだと
考えています。妊娠時は医療機関や薬局で必ずお伝えください。
★ 間違って飲みやすい妊婦に禁忌の医薬品
抗真菌薬…イトラコナゾール、フルコナゾール、 吐き気止め…ドンペリドン(ナウゼリン)
解熱鎮痛剤…ジクロフェナク(ボルタレン)、 片頭痛薬…ロメリジン(ミグシス)
胃腸薬…ミソプロストール(サイトテック)